AHA/ACC 2024 ガイドラインのポイントを解説
エグゼクティブサマリ:2014 年版からの主な変更点
- 周術期の意思決定は、ステップ型アルゴリズムに基づいて段階的に評価・判断するアプローチが明確化。
- RCRIやDASIスコアが機能的リスク評価の基盤として推奨。
- 低リスク手術ではスクリーニング目的の検査は原則不要。
- SGLT2阻害薬の術前3〜4日前からの中止が新たに推奨。
- MINS(周術期心筋障害)への対応強化、高感度トロポニンの活用。
- 新規発症心房細動への対応整理、CHA2DS2-VASc によるリスク評価。
- 術前ルーチンPCIは推奨されず、症候性や重症例に限定。
- 重症弁膜症・大血管手術では慎重な判断が求められる。
- 抗凝固療法のブリッジングは原則避ける。
- チーム医療・診療科横断的体制が重要。
- リスク評価方法が刷新(RCRI、NSQIP-MICA)。
- 術前ストレステストの適応が限定的に。
1. はじめに
- 非心臓手術の周術期における心血管管理は、重篤な合併症予防に直結。
- 非緊急手術を受ける成人患者を対象とし、術前から術後まで一貫した方針を提示。
2. 周術期心血管リスクの評価
- RCRI や NSQIP-MICA のスコアを活用。
- DASI による活動度評価(4 METs未満は追加評価)。
- 高齢者・虚弱患者には フレイル評価 を推奨。
3. 術前診断と検査の適応
- 検査の適応はリスクに応じて明確に。
- 4 METs 未満 + 高リスク手術 → 非侵襲的虚血評価を検討。
- 使用される検査:
- 心電図、心エコー、CCTA、ストレステスト、CPET
4. 周術期の薬物療法
- 心血管イベント予防を目的に薬物管理。
- スタチン・β遮断薬:使用中であれば継続。
- RAAS阻害薬:術前に一時中止を検討。
- DOAC/VKA:中止タイミングは手術リスクで調整。ブリッジング原則禁止。
5. 心血管疾患別の管理方針
- CAD:
- BMS後は30日、DES後は3〜6ヶ月空ける。
- 非症候性安定CADではルーチンPCI非推奨。
- 心不全(HFrEF/HFpEF):
- 薬物治療継続と体液・電解質の管理。
- 心房細動:
- CHA2DS2-VAScで評価し、適切な抗凝固療法を導入。
- 大動脈弁狭窄・大血管手術:専門的対応を検討。
6. 術中・術後管理
- 麻酔法、疼痛、循環管理を含む術中の総合的アプローチ。
- 心機能評価には FoCUS が有用。
- Hb 7〜8 g/dL未満を目安に慎重な輸血を。
7. MINS(術後心筋損傷)の診断と対応
- 無症候性でも 高感度トロポニン上昇があれば MINS。
- 術後スクリーニングとして トロポニン測定 を推奨。
- 治療は アスピリン、スタチン、GDMTの最適化。
8. 特殊集団の対応
- 移植候補者:非侵襲的虚血評価を優先。
- 肥満患者:CPETによる運動耐容能評価+OSA対応。
- 減量手術:術式によるリスク評価が必要。
9. まとめと臨床応用への示唆
- リスクに応じた評価と治療により非心臓手術の安全性向上。
- MINS・AF などへの対応強化。
- チーム医療・院内プロトコルの整備が導入を後押し。
出典
Thompson A, Fleischmann KE, Smilowitz NR, et al.
2024 AHA/ACC/ACS/ASNC/HRS/SCA/SCCT/SCMR/SVM Guideline for Perioperative Cardiovascular Management for Noncardiac Surgery
Circulation. 2024
▶︎ https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIR.0000000000001285